黒騎士は敵国のワケあり王女を奪いたい
結婚許可証には、フリムラン王家の紋章とリチャードのサインが記されていた。
夫となる者はギルバート。
妻の名前はフェリシティ・ラシュ・ミラベラだ。
ギルバートが目を見開いて顔を上げると、エルメーテは気難しそうに眉を寄せた。
「陛下がこれを我が国にとって有益とお考えになったまでのこと。黒旗騎士団には敵国の王女を盗み出し、結婚の了承を取りつける任務が課される。また、これまで認められてきた範囲で、国王軍の一部の指揮権を与える」
つまり結婚許可証があれば、ギルバートはいざというとき、国王軍を動かしてでもフィリーを守ることができる。
オスカーが愉快そうな笑い声を上げた。
「ギルにフィリーが口説けるかな」
ハーヴェイがギルバートの右肩を叩き、強く頷いた。
「黒旗騎士団はこの任務を必ず成功させる。出立は明日の深夜だ。お前たちの喧嘩が聞こえていないとでも思ったか。砦中が準備を始めているぞ。それから、新しいマントも用意してある」
ギルバートは答えに窮し、間抜けな声で言い返した。
「みんな敵国の王女を憎んでいると思っていた」
ハーヴェイが肩を竦め、オスカーと目を合わせる。
オスカーはいたずらっぽく片目をつぶった。
「真二つに叩き斬られるのが怖くて誰も本当のことを言えないのさ。でも、俺が最初にフィリーを好きになったんだ。なにしろ王女の初めての友人だからね」