黒騎士は敵国のワケあり王女を奪いたい
「すまない。だが、この先は復讐とはなんの関係もない。個人的な理由だ」
「この頑固者! だから俺たちは、その個人的な理由についていくって言ってんだろ!」
オスカーが怒鳴りながらうしろを追いかけてくる。
ギルバートがドアに手をかけたとき、廊下側から押し開けられ、ハーヴェイが顔を覗かせた。
「元気そうだな、ギル。話がある」
隣には宰相エルメーテが立っている。
ハーヴェイは怪訝な顔をするギルバートを強引に部屋の中に押し戻し、暖炉の前のソファに座らせた。
エルメーテが咳払いをして、ジュストコールの胸もとから書類を引っ張り出す。
「国王陛下は、キール伯爵の結婚相手をお決めになった。すでに結婚許可証も発行してある」
ギルバートは目眩を堪えた。
結婚!
これから国を捨てようという男にいったいなんの話かと思えば。
たしかにすべての侵略者を追い出したら、いい加減に花嫁を迎える約束だった。
伯爵家に生まれた以上、いつかは身分にふさわしい誰かを妻にするのだと理解してきた。
でもそれはフィリーを見つける以前のことだ。
誰もかも、ギルバートをみくびっている。
「宰相閣下、申し訳ありませんが、私は結婚するつもりがまったく……」
ギルバートは結婚許可証を突き返そうとして、ふと書面に目を留めた。
エルメーテの手から奪うようにして受け取る。