黒騎士は敵国のワケあり王女を奪いたい
「火竜の騎士伝説?」
フェリシティは目を丸くする。
ギルバートが諦めて身体を起こし、腕を伸ばしてフェリシティの背中を引き寄せた。
ふてくされたような声で額に囁く。
「俺は探し出して、話し合う必要がある。きみが毎朝ベッドから落ちるほど待ち焦がれていた、夢の騎士って奴と」
ギルバートがなぜ怒った顔をしているのか、その途端にはわからなかった。
フェリシティが幸せのせいで笑い声を上げる。
毎日、好きなところが増えていくばかりだ。
「ねえ、それってあなたなの。私、ずっとギルバートを待っていたのよ。フィルの名前が証拠だわ」
ギルバートは信じなかった。
首を振って、不機嫌そうに眉を寄せる。
「いいんだ。きみが長い間ほかの男のことを待っていたとしても、結局、そいつは間に合わなかった。俺がきみを見つけて、妻にしたから」
フェリシティはギルバートの腕の中でくすくすと笑っていた。
こんな毎日が、この先ずっと続くといい。
「これからはきみが眠っているときも、起きているときも、いつでも俺がそばにいる。きみを危険な目には遭わせないし、ひとりきりで泣くこともない。俺を捨てない限り、きみは自由で安全だ。だから夢の騎士は必要ない、そうだろ。なあ、シュガー、聞いてるのか」
「聞いているわ。好きよ、ギルバート」
ギルバートがフェリシティの口をキスで塞いだ。
フェリシティは目を開け、永遠の中でたったひとり、愛した騎士の氷の目を見つめ返す。
この世界で一番、恋に落ちてはいけない人。
だけどずっと、この人のことを待っていた。
「愛してる、フィリー」
ギルバートは唇の上でつけ足した。
「この世界で一番、誰よりも」
【完】


