黒騎士は敵国のワケあり王女を奪いたい

「すべてあなたに従います、我が国王陛下」

ギルバートは心臓に手を当て、頭を垂れ、なるべく従順に返したが、リチャードが微塵も信じていないとわかっていた。

リチャードは諦めたように肩を竦め、窓辺に歩み寄ると、片手でカーテンを開いた。
日が沈み、水の都に静かな霧の夜が近づいている。

「オスカーが度々私に警告するんだ。きみが孤独になりすぎていると。たしかに、きみが闘いにのめり込むよう仕向けた私にも責任はある」

ギルバートはついに顔を顰めた。
話が厄介な方向へ進んでいる。

「そろそろ結婚相手を選んでやらねばならないな。父上に代わって、私が世話をしよう」

「陛下、その件は……」

ギルバートが眉を寄せて言い淀むと、リチャードは愉快そうに口の端を持ち上げた。

「闘いを終えた今、きみにはもう結婚を後回しにする口実がないはずだが」

得意分野ではないが、ギルバートはなんとか説得を試みる。

「砦を取り戻したとはいえ、まだ国境付近の警戒は欠かせません。放っていた領地へ戻って諸々の整理をしなくてはなりませんし、当分の間、とても結婚相手を探している場合では……」

リチャードはわかりやすく嫌がるギルバートを笑い飛ばした。

「言い訳はそれだけか。きみに相応しい女性を探すのは私だ、心配しなくていい」

ギルバートはさらに口実を捻り出そうとしたが、間に合わなかった。
リチャードがピシャリとカーテンを閉じ、振り返る。

「言うことを聞くんだ、ギル。その呪いを解けるのは復讐ではない」

国王はまるで父親のような顔をして微笑んでいた。
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