ある日、ビルの中、王子様に囚われました。
「天宮と新澤は大学の同級生だ。俺は、二人がこの会社に引き抜かれた時に祖父の存在を知ったんだ」
はあ、と深く溜息を吐きながらのろのろと社長室へ向かう。
このオフィスの順路も知っているのを見ると、その話は嘘じゃないのだと思う。
お兄ちゃんは都内の私立大学を優秀だったので入学費および授業料免除で通っていた。
「どうせあの親父の父親だってことで、爺さんも信用してなかったし会うつもりはなかったんだけど、だ」
私の通いたい専門学校とは距離もあったし、お互い親が期待できないのだから自分たちで生活し自立するために一人で暮らしていた。
お兄ちゃんは総合商社に就職して海外に飛びまわるようになっていたので、よくよく考えれば交友関係は全く知らない。
「だけど、新澤が祖父が亡くなった時に遺産相続で揉めるだろうから要らないなら今のうちの放棄しとけっていうからじいさんに言いに行ったわけ。だから俺は一応財産放棄してる」
何から何まで知らなかった私は、開いた口が塞がらなかった。