ある日、ビルの中、王子様に囚われました。
「で、下のフロアに現れたから掴みあいの喧嘩したんだよね。エリートの明良にしては珍しいよな」
「最近ジムに行ってなかったから投げ飛ばすのに苦労した。落ちついたらジム再開するか」
新澤さんとお兄ちゃんが何故かこんな状況なのにお互いの最近の様子を語りだしたのですぐに割って入った。
「今はお兄ちゃんのドジな話はどうでもいいの。今の状況、お兄ちゃんなら教えてくれるよね?」
私が一歩踏み出すと、お兄ちゃんは新澤さんの肩から離れてゆらりと一人で立った。
「あー、俺、下のご両親を説得して帰らせてくるか」
空気を読んで新澤さんはすぐに出て行く。
黒沢さんもこの状況を見て大丈夫だと判断したのか、社長室へ戻っていく。
「……あの、天宮さんとお兄ちゃんってどういった知り合いなの?」
恐る恐る聞くと、頭の痛みを振り払うかのように首を大きく振られた。
顔を上げたお兄ちゃんは、不機嫌全開だった。
見た目はちょっぴり怖いけれど、喋れば好青年。高校からずっと引越センターや宅配のバイトをしていたので、がっしりした体つきで頼れるし、優しい。