ある日、ビルの中、王子様に囚われました。

「明日、ずっといい加減にしたままだったけど、父と母に会ってみるよ。弁護士の新澤連れて」

「……そうなんだ。私も」

私も行きたいと言おうとしたらやんわりと首を振られてしまった。

「お前はダメだ。俺がまず会話が出来る相手か話してみるから。それから、な」
「お兄ちゃんは無理してない?」

おずおずと聞いたけれど、お兄ちゃんはフッと笑ってまた私の頭を撫でてくれるだけだった。
私が、親が学費を払わないまま蒸発しちゃったり、親が自分のために何かしてくれたことがないって気付いても平気なのはきっとお兄ちゃんのおかげだ。

こんな風にいつも私の事を気遣って、見守ってくれているから。

「俺は無理はしない。安心して甘えろ」
「ぷぷ。格好いい」
「そうだ。兄は格好いい生き物だ」

照れくさそうに言いながら、話を逸らすために紙袋の中身を出した。

下の階で購入してくれたらしい。ロコモコ弁当とサラダが入っていた。

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