ある日、ビルの中、王子様に囚われました。


「急だったからお見舞いの品も何も用意できなくてごめんね。どうか長生きしてください」

眠っているお祖父さんに囁くようにそう言って私は立ち上がった。

そしてサイドテーブルに置いてあったメモ帳に『今までありがとうございました』とだけ書いて部屋を出た。

家に帰ろう。
きっと私が居ない方が、一人で天宮さんが会議を終わらせて会社をこれまで通り運営していくと思う。

私は奨学金を返し終えたので、少しだけ楽になった暮らしに戻るだけ。

もやし生活から脱出できる。

ただそれだけでいいんだ。

『おじいさんの部屋に行ってきたよ。眠っているようだったから寝顔見て帰るね。お祖父さん、めっちゃイケメンだったね!』

会議中だろうお兄ちゃんに簡単なメールを打ち、女医さんにお礼だけ言って部屋を出る。

そして初日に持っていた荷物だけ持って、ビルを出ようとエレベーターを降りた。


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