ある日、ビルの中、王子様に囚われました。
エピローグ。

「社長が身内に甘いのは、貴方のご両親の時に感じていた。だからこの作戦にでたんですよ。社長は病気のふりをして、スイートルームで普通に仕事してましたからね。もともと海外ではスイートルームを商談に使ったりするんですよ」

「へえ……。って、どこに向かってるのでしょうか?」

おじいちゃんとお兄ちゃん二人は、祝杯と称してビル内にあるBARへ向かったのだけど、私は天宮さんに送る、と言われて車に乗り込んだ。
けれど先ほどから私の家と真逆へ向かっている気がする。

天宮さんの車は艶々に手入れされている高級外車で、中も天宮さんのこだわりで全て本革で、新品みたいな匂いがした。
信号待ちや擦れ違う人が振り向くのが分かる。
私も最初は緊張していたので、自分の家と真逆だと気付くのに時間がかかった。

「そうですね。ちょっと遠回りして夜景を見つつ、俺のマンションへ」
「い、いきなり天宮さんの家!?」

それは恋愛初心者の私にはハードルが高い様な気が。
「嫌なら……無理強いはしないけど」
と言いつつ、明らかにしょぼんとしたした声で言うのはずるい。

「い、嫌というわけではないのですが、でも」

「そう言えば、多少強引に婚約したけど、君からは気持ちを聞いていなかった」

多少強引?
強制的発言していませんでした?

「君の俺への気持ちを聞いていなかった」

ブレーキと共に止まる車。
信号待ちの車の中、沈黙が続く。
ものすごいプレッシャーの中、おずおずと天宮さんを見るとにやにや笑っている。

「ず、ずるい」
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