ある日、ビルの中、王子様に囚われました。

「ホテルに閉じ込めていた方が良かったかな?」
本気にも取れるような発言に、小さく息を飲んで顔を近づけて囁く。


私も、好きです。

声がかすれて情けない感じになったけれど、そのまま肩を掴まれた。

「――マンションでも俺が紳士であるように祈っておいて」

「えっ」

「俺も好きですよ」

その瞬間、少しだけ天宮さんの顔が左に傾げられて、顔が近づいてきた。

恥ずかしながら、それは私にとって生まれて初めてのキス、だった。

眼鏡が微かに当たってくるけど、ぶつかったりしないと経験がない私はその時、学んだのだった。


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