鶫さんはこんなひと
……これは……。

それをきっかけにして芋づる式に次々と頭の中に浮かび上がってきた。光の速さで。走馬灯のように。いや、死なないけど。

バーベキューをするのに良い場所を知らないかと係長が訊いた相手がたまたま鶫主任で、実家近くのキャンプ場なら知ってるとたまたまそこを紹介して、じゃあそこで良いんじゃないかとたまたま決まって、で、いつもはお酒を飲んでもそんなに酔わない明里さんが酔っ払ってしまったのもたまたまで、たまたま決まったバーベキューの場所が鶫主任の家の近くだったもんだから、そこへ明里さんが担ぎ込まれて、そうそう。たまたま。

……たまたま……。

サケのムニエルホワイトソースがけに箸を入れたまま、しばらく動けない。心拍数が徐々に上がっていくのが分かり、箸を握る手に嫌な汗を感じ始めた。
細かく刻む心拍数は一つの警告音なのかも知れない。
やめておけば良いのに、おもむろに顔を上げた先に鶫主任と目線が合った。

鶫主任は人差し指を口元にあて、意味ありげな表情を私に送ってきた。

ー!

思わずその表情に息をのんだ。



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