野良猫を愛す
第1章
俺達が、大学生のときバンドブームがあった。そんな中 俺達もバンドを組んでいた。まだ駆け出しもいいとこで衣装を買う金もバイトしてやっと捻出してるような中、次のイベントの打ち合わせで原宿に来ていた。このころはゴスロリブームもあって街中は似た様な格好の女の達で溢れていた。
そんな中、まわりとは雰囲気から違う少し太めで小さい女の子に目が留まった。いつもの俺らだったらありえない行動に出た。おもわず近づいて声をかけた。
「ねぇ。その服可愛いね。」
「…」
目見開いて驚く彼女に出来るだけ優しく微笑むと、少しだけ笑顔になった。
「この服…自分で作ってるんだ。褒めてくれてありがとう。それじゃ…」
立ち去ろうとする彼女の腕を掴むと半ば強引に近くのカフェに連れていった。
かなり怯える彼女を席に座らせて話をすることにした。
「俺、斗和 隣に居るデカイのが涼 俺ら二人でバンド組んでるんだけどさ。もし、良かったら衣装作ってくれないかな?」
「そうや!!!きみの服に惚れてしもうたんよ。お願いできひん?」
「…あの、私なんかでいいんでしょうか?」
「なんかって言うなや。君のがええんよ。」
「そうだな。君の服…縫製もデザインも丁寧に作ってあるのがわかるからね。本当に好きなんだね。その蝶のピンキーリングも手作り?すごく繊細でいいよ」
「あの!!!服作ってると幸せなんです!それに、自分…デブだから余計にサイズなくて…私、結愛っていいます。」
一生懸命、服について語ってくれた。その姿が本当に愛らしく笑ってしまった。
俺達に笑われたことで、少し恥ずかしそうに照れ笑いを浮かべていた。俺らがどんなバンドをしているのか。まぁ、俺らは他のバンドみたいにプロを目指してるというより若い内にできる活動としてやっている事も素直に話した。俺らの話を真剣に聞いている結が可愛くも思えた。
結の話も色々してくれた、親とは馬が合わなくて今は叔父さんところに居候していること今は、そこで制作活動してること。今は女子高の1年生だと言う事。近々、打ち合わせをするためメールと電話番号を交換して別れた。
結が立ち去ると不思議な高揚感にいっぱいになった。まるでダイヤの原石を発見したような感じだった。
「なぁ…結って凄い子やねぇ。デザイン画見せてくれたやんか。いかにきれいに見せれるか計算しつくされておったわ。」
「あぁ~確か涼の元カノ服飾系だったな。まぁ、俺はあの子の作った服着てみたいだけ。でも話してるあの子キラキラ目が輝いてたな。痩せたら可愛いのにもったいないな~。」
「女の子の体型のこと言うたらかわいそうやんか。斗和はひでぇな。」
「うるせぇなぁ。てか涼・・・俺バイトだわ。また連絡するわ」
涼に断り入れて、バイトに向かった。俺のバイトは、将来を見据えてプログラマーのアシスタントをしている。アシスタントと言っても電話対応だったり、簡単なプログラミングをさせて貰ってる程度。将来的にはフリーでやっていきたいので今は、とにかく経験を積める環境に感謝しなくてはならないのだ。俺も涼も大学2年で二人とも一人暮らしをしている。涼は、ライブハウスでバイトしている。そのおかげでライブするのも少し楽にできているのだ。結と出会ってから1週間が過ぎたころ、写真付きのメールが俺と涼宛に届いた。
衣装のデザイン画が貼り付けてあった。二人が気に入ってくれるといいなぁ。とメッセージ付きだった。
大学の昼休みに二人で見た。デザイン画には、長身の涼にロングのジャケットに綺麗に見えるように細身のズボン。
俺には、アンクルパンツにロックTシャツでダメージ加工がされてる。そして、アクセサリーのデザインも描かれていた。お互いに見せ合うとつい顔を見合わせてしまった。
「結の奴 ほんまに最高やな。これ着てみたいわ~」
「まったくだな。それにしても何で原宿に一人だったんだろうな。高校生なんてダチと騒いでる様なもんなのにな。」
「まぁ、人それぞれやからな。そうや、結のこと高校に迎えにいかへん?衣装の話とか聞きたいし。俺 車やからさ。どうやろ?」
「今日バイトもねぇし、行くか。」
涼の車で、結が通う学校の近くに行くと結が女の子達に囲まれてるのが目に入った。
けして穏やかな感じではなく罵声が響いた。結が抱かかえてるスケッチブックをリーダー各の女が取り上げた。その瞬間に大人しく罵声を浴びてるだけの結が必死に取り替えそうと反抗した。相手が避けた為、結が転んだ先に水たまりがあり結が濡れてしまった。そんな結を嘲笑う様に見下し、結の手を踏みつけた。
「なにこれ~。デザイン画?てかお前みたいなブスが作った服なんて誰もきたくねえし!!!まぁ、デブだから妄想で着るしかできないのかもね~。お前なんていらないんだよ!」
そういってデザイン画を破こうとする瞬間に俺らが間に入った。結のデザイン画を涼が取り上げた。
「俺の女になにしてんの?結、どうした?まったく水遊びか?こんなに濡れてさ」
「え…っと、その…」
戸惑ってる結を軽く抱きしめて耳元でそっと囁いた。
(いいから、黙ってろ…)
「ったく、仕方ないな…ほら、風邪ひくだろ?おれのジャッケト着とけよ」
「なぁ…君たち、やりすぎやな。コイツに手を出すなや。ほんまに怒るで?」
真顔で涼が言うと女の子達が一瞬固まった。
「ちょっと…ふざけただけよ。ほら、行くよ!!!」
取り巻きを連れて立ち去ってしまった。そっと結に目線をやると目も合わせてくれずガタガタと震えていた。
「ごめんなさい…こんな姿見せてしまって。」
「謝ることねぇよ。大丈夫か?とりあえず車に乗りな。」
そう言うと後部座席に乗せた。
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