なぜか私、年下ヤンキー手懐けました。
「だけど、今回結構きつかった」


「何が?」


「今まで先輩がひとりでこなしてた仕事。朝早えーし、めんどくせーし、結構体力使うし。そのくせ、誰も褒めちゃくれねー。こんな仕事ばっか引き受けて、センパイバカじゃねーのって何回も思った」


「悪かったわね……」と言ってムッとしてみせる。


だけど、いつもより真剣な様子の長瀬との異常な距離感に内心穏やかではいられない。


ドキドキとうるさい心臓が、長瀬にも聞こえてしまうんじゃないかとひやひやしながら、長瀬の次の言葉を待った。


長瀬は「でも……」と話を続ける。


「バカじゃねーのって思ったけど、すげーなとも思った」


「……え?」


「センパイ、ずっとひとりであんなのやってきたんだろ?すげーじゃん。普通どっかで心折れんだろ。先輩は自分のこと弱えーとか言うけど、全然そんなことねーよ」


「センパイは強えーよ」そう言って私の頭に優しく手を置く長瀬に、私は酷くマヌケな顔をしてしまっているだろう。


意外なことに長瀬のその言葉は、私の心にスッと落ちてきて、冷たくなっていた心の部分に温かい光を灯した。
< 83 / 345 >

この作品をシェア

pagetop