なぜか私、年下ヤンキー手懐けました。
じわりと無意識に浮かんでくる涙に、「め、目にゴミが入った!」と言って慌ててゴシゴシと目をこすれば、長瀬の手によってそれを制されてしまった。


「センパイ。もうひとりで頑張んなくていーよ」


長瀬の優しい瞳が、私の顔を覗き込む。



「俺はセンパイを嫌いになったりしないから、これからはセンパイの辛いの半分こして?」


「……っ」


こいつってヤツは……。


どうしてこうも私の心にズカズカと踏み込んでくるんだろう?


ふっと小さく笑って、ギュッと私を抱きしめてくる長瀬は、やっぱりあの似合わない香りがする。


優しくて甘い、何だかホッとする香り。





「……離しなさい。長瀬」


私がやっていた仕事を、急に分担するなんて言ったらみんなどんな顔をするだろう?


また陰で悪口を言われたりするのかな?


でも、それでもいいかなって少しだけ思える自分もいる。


そうなっても、きっとこいつだけは味方でいてくれる気がするから。


こいつだけは、頼んでもないのに分かってくれてる気がするから。


あーもう。


ほんとのほんとにあと少しだったのに。
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