お見合いですか?
マリッジブルーかい?

林の憂うつ

 土曜日の朝、ゆっくりと布団のなかで寝ていた林は、玄関のチャイムと、妻の驚いた声で起きた。
「どうしたの?愛ちゃん!」
妻の有希の声が、玄関から聞こえてきて、俺も玄関のほうへ向かった。
1歳の息子はまだ寝ている、大した奴だ。

 「面倒くさい奴ね~、はあ~、愛ちゃんも大変ね。」
森高さんから、事情を聞いた有希が呆れて言った。
「はぁ、今になってそんな事言われるとは思わなかった。何となく、本社に行ってからおかしいんですよね。」
森高さんは、じろっと突き刺さるような視線を寄越してきた。
「林さん、私の戻りたい発言を、御両親になんて言ったんですか?」
突き刺さった視線のまま、彼女が問いかけてきた。怖い!目が笑ってねぇ。

 うわーんという、息子の泣き声が聞こえてきて、有希は寝室へ向かった。

 ダイニングテーブルの斜向かいに座っている森高さんは、俺に原因があると思っているようだ。
「おれは、森高さんの言葉通りに伝えたよ。子育ては地元がいいらしいよ、って」

「御両親は、何か言ってましたか?」

「うーん、お袋は、親のそばで子育てしたいのは当然だろうって、親父もこっちに戻りたいなら都合が良いって、森高さんの発言は特に問題視してなかったけど。」

「そうですか、私は、てっきり林さんが、森高さんは地元にいる人と結婚したかったんじゃないの?とか言ってるのかと思いました。」
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