お見合いですか?
過去が気になるのか?
 4月も半ばを過ぎた、ある昼過ぎのこと。
林の元に、本社にいる同期から、メールがきた。

"支社からきた、森高さんが、悠斗のこと、特に女関係、皆に聞いてるんだけど、上手くいってないの?"
メールをくれた相手も、同棲のことは知ってるから、不思議に思ったのだろう。普通に考えたら、上手くいってるときに、相手の過去なんて詮索しないはずだ。

 林は、支社長のデスク前で書類を渡しながら、「森高さん、色々聞いて回っているみたいだぞ、お前の事。」と、悠斗に話す。
「えっ、何で?」
「いや、それは俺が知りたい。心当たり無いのか?」
 今日、森高さんは、森のパスタの試作品を試食するため、本社へ行っている。だから、まだ帰っては来ないだろう。

「はっきりとは、分からないけど、最近、なんかおかしい気がする。」
「森高さん?」
「ああ、 で、誰かに聞き出してもらえれば、解決出来ると思わないか?」
「いや、あまり期待するなよ。」
「協力してくれるって、言ってたろ、頼むよ。親友。」
「こういう時だけ、親友にするな。って言いたいところだけど、今回は協力するって言ったの自分だしな、聞いてみるよ。」
 
 はぁ、興味本位で聞き出すんじゃなかったなぁ。と、自席に戻りながら、林は半月ほど前の会話を思い出した。
 その日はなぜか、支社長に話を聞いてこい、と有希からメッセージがきたのだ。
まぁ、確かにその日の森高さんは機嫌が良かった。因みに、悠斗も。
「なんか、良いことあった?」
「いや、別に」
「森高さんも、機嫌良かったみたいだけど?」
「そうか?」
「もう、しちゃった?」
「いや、それはない。」
「珍しいなぁ、なんか訳あり?」
「ちょっと・・・血液検査を受けて欲しいって、で、確実にするために、3ヶ月はしないでくれって。」
「血液検査って?何で?」
「性病にかかってないか調べたいらしい。」
「3ヶ月って?」
「ウィルスに感染してても、3ヶ月位経たないと、検査しても、分からないらしい。」
「えっ、それで?まじか?いやーやるね、森高さん。じゃあ、何でそんなに機嫌が良いんだ? あっ、そう言えばお前、久々明日、土曜休みだよなぁ、・・・もしかして、初デートだったりする?」
悠斗が、言葉に詰まって、飯をかき込んだので、自分の言った事は、正しかったんだと納得した。
そして、同居してるにも関わらず、3ヶ月も手を出せない男に同情し、言ってしまったんだ。
「まぁ、協力出来る事があったら言ってくれ。なるべく努力する。」と。

 林は、自分のデスクで、遠い目をして溜め息を吐いた。
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