縁に連るれば
「妃依ちゃんと俺が、どこかで繋がってるのかもしれないね」



それは、いつかは切れてしまう糸のようだ。


もしかしたら、糸くずかもしれない。

嬉しさと悲しさの混じり合った、色とりどりの糸くず。

そんな関係。


いつか、それをぐちゃぐちゃに丸めて捨てられない世が、この先に待っているといい。


新選組を抜けても、蚕のように糸を吐き続けられたらいい。



「妃依ちゃんのことを知りたいし、ちゃんと話してみたいんだ」



ここまで言っておいて、“俺じゃなくてもいいだろう”という言葉が糸を伝って降ってきた。


地を見つめ、頭をわしゃわしゃと掻く。



「……なんか変だな。ま、気にしないで!」



この誤魔化しは悟られないだろうか、と恐れながら、最後の団子の一欠片を口に入れる。


ふいに、肩をちょいちょいとつつかれる。

何かと思って彼女を見つめれば、口が動かされた。

私も、とでも言ったのだろうか。



「……え?」



どういう意味、と問うより先に、彼女はその先を一所懸命に伝えようとしてきた。



『――――』



今度は長い。

これは恐らく――


『私も平助のこと、知りたい』



そう言われた気がした。なんとなくだ。

口の動きだけで言葉を読むなんて、妃依ちゃんと会うまでやったこともなかったけど、分かった。

妃依ちゃんだからだろうか。


気持ちを通じ合わせるというのは、案外難しいことだ。

そこに言葉があろうとなかろうと、声があろうとなかろうと。


俺は、偶然を信じすぎているのかもしれない。

この少女を、信じすぎているのかもしれない。


言葉の雰囲気を理解できるということは、そういうこと……なんじゃないかな。



思わず見つめあった、かと思えば、妃依ちゃんに視線を外される。

少し見すぎただろうか。


団子の棒を皿に置き、再び空を見上げてみる。



「……いいよ。お互いのこと、色々教えあおう」



良くないことは分かっていた。

でも、知りたいと思ってくれているなら、話は別だろう――?


ところがその気持ちに応じられない自分もやはりいて。

曇りだした空に睨まれている気がした。


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