和花葉さんは今日も
和花葉さんは、少し悪くなった空気を打ち消すようにパッと顔を上げ、あの、木でつくられた小屋を指差した。
「あそこにある小屋、私がつくったんだよ」
「は!?」
得意気に言う彼女を見る。
「木材とか買って、太郎が雨風をしのげるようにって」
素直に驚いた。
一匹の猫のために、毎日、餌をやりにきて、こんな物までつくってしまう。
彼女にとって太郎は、余程大切な存在なのだろう。
「和花葉さんは……」
和花葉さんに質問しようとして口を開いたと同時、SHRが始まる5分前を知らせるチャイムがなった。
もうそんなに経ったのか。
「そろそろ帰らないとね」
「……和花葉さん」
立ち上がり、教室に戻ろうと歩きだした彼女を呼び止める。
「明日も……ここに来て、いいか?」
俺の言葉に、少し目を見開く。
「……もちろん」
少しの沈黙の後、彼女は微笑んで言った。