【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
……去年は、花火大会にも綺世と来た。
もちろん情緒不安定期だったせいで、浴衣を着るなんてことはしなかったけど。懐かしいなと思っていれば、ふたりともこくんと頷いてくれる。
それを見て人混みから遠ざかるように、彼が去年連れて行ってくれた道を思い出すように進んでいって。
──たどり着いてから、ようやくわたしは自分のとあるミスに気づいた。
「あれ、ひのちゃん?」
「の、んちゃん」
……そうだ。そうだった!!
綺世が連れて行ってくれたんだから、すなわち、彼も当然この場所を知っているわけで。
「ほんとだひのちゃんー!昨日ぶりだねー!」
今年も来てるんだとしたら、普通に考えてここにいる可能性があったっていうのに。
なんで気づかなかったんだわたし……!
音ちゃんの声で気づいたみんなが、わたしに気づいて声をかけてくる。
屋台をちょうど見下ろせるここは、少々複雑な道を抜けた先にある高台の公園。花火も近くで見えるんだけど、なんていうか、それどころじゃない。
「ごめん夕李……わたしミスした」
「だろうな。俺も気づかなくて悪かったけど」
「……? 綺世さんだ」
唯一何も知らないかのが、わたしから離れて。
なぜか綺世の元に行ったかと思うと、ぺこりと頭を下げて丁寧に「おひさしぶりです」と挨拶してる。えらい。偉いんだけどかのちゃんちょっと空気読んで……!
「ひさしぶりだな。
前より綺麗になったんじゃないか?」
「そう、ですか?ありがとうございます」