【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-



微笑ましい平和な光景。……なのに。

かのに向けて発せられた"綺麗"って言葉に、ちょっとモヤっとする。ばかだわたし。



妹にまで嫉妬してるなんて、そんなことを言ったら綺世に嫌われるんじゃないだろうか。

……どこか複雑な気持ちになっていれば、夕李がわたしの肩に手を乗せて、顔を寄せる。



「……夕李?」



「俺、テキトーにかのと回ってくるから。

……お前は、ここで一緒に楽しんどけ」



「夕、」



くちびるが耳に触れそうなほど近くて、わざとらしいその距離に、さすがにちょっとドキドキする。

髪を束ねてるせいで、いつもよりも鮮明に耳に触れる吐息に頬が熱い。いいから、と念を押すように囁かれる声すら甘くて、崩れ落ちそうになっていたら。



「もー! 夕ちゃんお姉ちゃんにひっつかないで!

お姉ちゃんはかののだもんっ」




──たった今まで綺世の元にいたはずの妹に、勢い良く引き剥がされる夕李。

かのちゃん、と名前を呼ぶよりも先に抱きつかれて、夕李と顔を見合わせて苦笑するしかない。



「かの、わかったから落ち着いて。

みんながびっくりしてるじゃない」



「やだもん……」



ぎゅうっとわたしの首裏に腕を回して抱きついてくるかのの耳元で、そっと「大丈夫」と囁く。

それから声をひそめて、「がんばって」と彼女の背中を押した。



「じゃあ、夕李……

まだちょっと嫌がってるけど、かののことお願いしてもいい?」



「お、お姉ちゃん、やっぱり一緒に、」



いてほしい、と縋るような瞳を向けられたけれど。

大丈夫よと腕をほどいて、強制的に夕李の隣に並ばせた。不安そうな顔をしてるけど、頬が真っ赤なのは、まぎれもなく。



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