【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
自ら「気持ち悪いって思った?」って聞くということは。
過去にきっと、そう言われるような傷つく経験をしたということで。それでもその道を歩いていくと決めたふたりが、純粋に素敵だって思った。
「わたしの通ってる城藍高校はね。
そうやって、わたしみたいに秘密を抱えた人たちが通う学校なの」
「、」
「だからみんな、クラスメイトでも仲良くなれなくて、公に付き合ってるカップルもいないの。
……万理とのことを知られたくなくてそこに入るって決めたから、わたし、学校で仲良くできる人いないんだ」
はじめて出会ったとき。
彼女が言った、仲良くして欲しいという言葉は。──音ちゃんが心の奥深くに隠していた、本心だったのかもしれない。
「とにかく、ほんとに綺世とは何もないから安心して?
わたしが綺世のことを好きみたいに振る舞ってた言葉はぜんぶ、万理に対して思ってることを綺世の名前に置き換えただけだよ」
そう言う音ちゃんのことを。
愛おしそうに見つめる万理と、それに気づいてふふっと笑う音ちゃんが、すごくすごくしあわせそうで。──このふたりがどうか、この先もしあわせでいてくれればいいと本気で思った。
「だからもう。
……お前の心配するようなことは何もねえよ」
「ッ、」
「強引に姫にもどす計画は、いずれ事実を知ったときお前のことを傷つけるだろうなってわかってた。
だから反対してたが、最終的に折れたのはお前のことをそれでも取り戻したい気持ちを優先した俺の弱さだ。……悪かった」
真っ直ぐに、綺世に見つめられて。
ふるふると首を横に振る。白銀は?と音ちゃんが本当に所属していると聞いていたチームの名前を出せば、「白銀は双月の傘下のひとつだよ」と万理が教えてくれた。……つまり、敵対していることも嘘。
つまり、聞いたことをまとめれば。
すべては、綺世とわたしがまた恋人関係にもどるための、壮大な計画だったのだ。
「お前と音の予定がほとんど合わなかったからな。
衝突するようなこともなかった分お前にすぐにバレるかと思ったが、」
綺世の手が、そっとわたしの手を掬う。
それからお揃いの指輪の上に落とされたキスで、瞳に溢れてしまいそうなほどの涙が滲んだ。