【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
それより、音ちゃんはさっき自分で言ったのだ。
名乗られてないのに、わたしの名前を初対面で「ひのちゃん」と呼んだと。──だけど、それはわたしも同じで。
「音ちゃん……ごめん、本名は?」
「広田 万音(こうだ まのん)だよー」
ちょっと待って音ちゃんって名前ですらないの!?
本名じゃないの!?音、って一文字の名前だと思ってたんだけど!?
「ふふ、ひのちゃん驚きが全部顔に出てるよー」
「だ、って、」
驚くでしょう、と。
言いかけてばっちり目が合った万理のせいで、とあるセリフが脳裏をよぎる。……万理、って。
「音ちゃんのこと好きだ、って」
「まあ、妹だから当然好きでしょ。
……ってだけならよかったんだけど。俺と万音、親同士が再婚しててお互いの連れ子だから血はつながってない戸籍上だけの兄妹なんだよね」
「だから、万理が言った「好き」ってのもほんと。
……早い話、兄妹だけど付き合ってるっていうか、」
恋愛関係だよ、と。
どこか切なさと甘美を兼ね備えた「禁忌」のふた文字が、わたしの頭の中に浮かぶ。だけど本人たちはそんなこと気にも留めない様子で、笑ってるから。
「さすがに気持ち悪いって思った?」
ずっと笑ってた彼女の不安そうな表情に、考えるより早く「そんなことない」と言葉が口をついて出た。
確かにふたりは、世間から見ればすこし変わった形で恋愛をしてるのかもしれないけど。
それを気持ち悪いだなんて、思ったりしない。
むしろふたりは世間からどんな目で見られるかもわからない恋に対してこんなにも前向きなのに。──むしろいままで自分の傷から目を背けてきた自分が、ひどく情けなく感じる。