【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-



絶え間なく、こぼれては彼女の肩に沁み込んで消えていく涙。

これじゃあどっちがお姉ちゃんなのかわからない。かのちゃんの方が、よっぽどわたしよりも大人だ。



「だって夕ちゃん、ずっとお姉ちゃんのそばにいたんだもん。

それでも、お姉ちゃんのために黙ってくれてるんじゃないかな」



「かの、」



「お姉ちゃんのことは、お姉ちゃんを好きな夕ちゃんがいちばんわかってくれてるよ。

好きな人のことは、その人を好きな人が一番よくわかってる」



罪悪感なんてそんなものでそばにいるのが余計に夕李を苦しめていることは、わかってるのに。

いつか夕李を好きになれたら、ってそんな確証もない感情を捨てきれなくて。──綺世を好きな気持ちもまだ、捨てきれないの。



「っ……ばかみたいでしょう?」



綺世が、お揃いのものをリングにしようと言ってくれたとき。

迷わず頷いたような最低の女なの。綺世がまだ、当たり前のような距離感で接してくれることも触れてくれることも、うれしくて堪らないのに。




それを隠してまで、そばにいようとしてるの。

裏切っている"あなたの彼女"を、追放するために。



「お姉ちゃんは、ややこしく考え過ぎだよ」



「………」



「だってお姉ちゃんは、綺世さんのことが好きなんでしょ……?

でもそばにいることが不可能だから、そばにいてくれる夕ちゃんに甘えてるだけ。甘やかしてくれてる人から離れるなんて、わたしだってさみしくて嫌だもん」



「……かのちゃん」



「お姉ちゃんは、ひとりになるのが怖いんだよ。

もう……おねーちゃんは甘えたなの!わたしがいるのに夕ちゃんなんてそばにいなくてもいいでしょー!」



もうー!と。

唐突に叱られて咄嗟に「ごめんね」と謝ったら、感情がこもっていないと怒られた。理不尽な。



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