祐也と私と一平先輩
私の泣き声で一平くんのお母さんが部屋に飛んできて。


一平くんは私の腕をつかんでそのまま家を飛び出したっけ。


それから.....。


私は記憶を探った。


.....確か、どこかのビルの屋上に二人でいたんだ。


二人でひざを抱えて夜の街を見下ろしてたんだ。


今思えば中二なんて多感な年ごろで、不安定な気持ちを一平くんは持て余してたんだ。

シングルマザーだったおばさんにも気を使って、自分の気持ちを押し殺して優等生を演じて誰にも言えない感情の行き場所を探していたのかも知れない。


一平くんも苦しんでたんだよね。


そして.....。


『俺ここから飛び降りるわ』そう言って、背の低い柵を超えようとしたんだけど、

私が一平くんの腕をつかんで泣きながら、

『一平くんが死ぬなら私も死ぬ』

そんなことを言った記憶がある。
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