ふたつ減って ふたつ増える
マサヒコさんはうちのアパートの大家さんだ。
本当はマサヒコさんのお父さんが大家さんだったけど亡くなったので、跡を継いだのがマサヒコさん。マサヒコさんは律儀にご挨拶に回っていて、我が家にやって来た時に丁度私がタマを抱きながら「はーい」って出てしまい「新しい大家です」って言われて動きが止まってしまった。
マサヒコさんは私に抱かれたタマばかり見ていた。
ここはペットどうだっけ?
お母さんの友達からもらった仔猫のタマ。
彼女の存在は、大家さんに届けていない。
玄関先で黙り込む私を不思議に思い
お姉ちゃんが出て来て
お母さんが出て来て
「新しい大家さんだって」って私が言うと、同じく2人とも身動きが取れなくなる。
マサヒコさんは「新しい大家です。よろしくお願いします」って逃げるように名刺とカステラを置いて行ってしまった。
後から聞くと
私達の顔がすごく迫力があり
怖くて怖くて
『この猫の話を聞くと刺されるかもしれない』
そんな気持ちだったと教えてもらい
みんなで笑った。