藤沢先生の白いキャンバス。(修正済み)

たまに私を見るのが
何だか余計に恥ずかしい……。

心臓がドキドキと高鳴ってしまう。

「あの……何で私を描いているのですか?」

もう描かないと言っていたのに
どうして描く気になったのだろうか?

不思議にしていると手を動かしながら

「何ってお前が、言ったのだろ?
描かないのは、勿体ないって……」

藤沢先生がそう言ってきた。

確かに言ったけど……。

「それよりお弁当箱は、洗って置いたぞ。
旨かった…。
手紙も……悪かったな。いくら
昔のことがあるからって
お前に八つ当たりしてしまった」

「俺は、描いていると……絵に没頭するあまり
夢を忘れなくなる。
そうなれば……返って辛いだけだ。だから
忘れるためにも描かないようにしていた」

そう話す先生の表情は、とても辛そうだった。

お弁当食べてくれたのは、嬉しい。
美味しいと言ってくれたのも……。

でも、そんな辛い気持ちで居るのに
私は、なんて
勝手なことを言ってしまったのだろう。

「すみませんでした。
それなのに勝手なことを……」

「いや、謝るな。
本当は、嬉しかったんだ。
あんなちっぽけで
どうしようもない俺の絵を見つけて
捨てるのが勿体ないと言ってくれたのが。
それに……よし、描けた」

そう言いかけた先生の手か止まった。

どうやら納得いく絵が描けたようだ!
私も見たい。

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