課長の胃袋をつかみました
2.おかしな告白
お昼からの記憶はない。
課長になんだか衝撃的な一言を言われた気もするけど、気のせいだ。
ああもうじかんだぁ などと棒読みまるだしの苦しまぎれの言い訳でその場からマッハで逃げ出した気もするけど、気のせいだ。
断固として気のせいだ。
他を寄せ付けないオーラを放ちながら猛スピードで今日締め切りの仕事をこなし、全力で残業を回避、時計が定時の5時半を回った瞬間に猛スピードで席を立った。

「おつかれさまでした。お先に失礼します。」

今の私はボルトの化身である。
いち早く会社を出て課長を回避しなければならない。
そんな使命感に燃えていた私であったが、ミッション開始数秒後にあえなくボルトは退出することになる。

「茅野、ちょっと待て。ちょっと話があるから会議室2に来てくれ。」

……してやられた!
課長に必殺技、上司からの圧力を繰り出されてしまった。
そういうわけで上司には逆らえないので、ミッションは失敗となった。
会議室2に行くと課長がものすごく笑顔で待っていた。
しかしその笑顔の裏には物々しいジョーズのBGMが流れている。

「かーやっの、俺とちょっとお話ししよう。」

課長は笑顔でそう告げると思いっきり私に壁ドンした。
なお、私の心臓の音はときめきでトゥンクではなく恐怖でバックバクである。

「なんでさっきから避けてる。話しかけようとしたら途端にどっか行くし。」
「さ、避けてないです。気のせいです。」

課長と目を合わせられず、思わず目をそらす。
すると課長がふーっとため息をついた。

「まあいい。昼間の件も兼ねて連れて行きたいところがある。飯も食おう。なんでも好きなもの食べさせてやるから。」
「……和食で…。」

この際課長を振り払うのは不可能なので腹をくくって美味しいものでも食べさせてもらおう。

課長はまだ仕事があるので、駅前のショッピングモールで待ち合わせることにした。

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