姫、私は誓います。
私のせいか。医師なら治して当然だろうとでも言うのか。私だって本当は助けたかったさ。ラークが手をかけなくて済むようにしたかったさ。でも、仕方が無いだろう。目の前の人全てを助けようとしたら全て失ってしまうんだから。私一人では半数も助けられなかったんだから。
それでも前を見たいんだ。レイア姫が亡くなる前も亡くなった後も、色んな人の死に目に立ち合ってきた。あの娘さんだってその一人さ。でも、だからこそその人たちの分まで前を見ていたいんだ。希望を持っていたいんだ。それが生きる意味じゃダメなのか。別にもういいだろう、レイア姫。あなたには私がいなくても生きていけるだけの力があるはずだ。希望を見つけられる勇気があるはずだ。だからいい加減、私の手を離して一人立ちしてください。私はあなたという存在に会えただけで充分生きる希望になりましたから。
私は、新しい一歩を踏み出したかった。だから私は、自分を過去に縛り付けていた記憶を忘れようと思う。私はレイア姫の花粉がいる方にクリスタルを嵌め込んだ左手を向け、破滅の呪文を唱えた。
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