姫、私は誓います。
過ごしてきた日々を一歩ずつ確かめ合うかのように喋り出す私たち。 包み込むのは形だけ広く残ったこの家と温かい色をしたランプだけでした。
私はあの人と出会って65年、何を感じて何を見てきたのでしょう。何を信じ、何を愛していたのでしょう。
私はあの人を妹に似た感情で愛していました。ラークやルークのような青春の一ページを飾れるような恋の相手としてではないのです。まとわりつく鬱陶しい妹としてあの人を愛し、危なっかしいとそばを離れられずにいたのです。でも、それ自体が間違いだったのでしょうか。私があの人を“愛した”という事実自体、この最悪な人生を送らせてしまう引き金になってしまっていたのでしょうか。
辛く苦しいのは自分だけだと思っていた昔が懐かしいです。若い頃は不幸が起こると自分だけ不幸である、世界で一人だけ不幸なんだって思っていましたから。あの頃はそう。今のようにうまく世の中を渡ろうなんてしたくないと反抗していましたから。自分の気持ちに素直だったから本当に懐かしいですね。
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