僕と彼女のヒミツ☆★

ユズル兄の裏の顔

夕食も食べ終わり、僕は、自分の部屋で、天川さんのことを考えていた。

その時、コンコンッとドアをノックする音。

「おい、ヒカル。入るぞ。」

僕が、返事をする前に、無造作に部屋に入ってきたユズル兄。

「ユズル兄。その二重人格、やめたら?しんどくない?」

「二重人格だと?何言ってるんだよ。処世術と言えよ。」

悠々と、僕のベッドの上で、くつろいでいるユズル兄は、そう言った。

「それを猫かぶってるって、そう言うんだよ。」

僕は、ユズル兄に聞こえない声で、そう呟いたつもりだった。

だけど、それを聞き逃す、ユズル兄じゃなかった。

「本当にお前、生意気だな。」

ユズル兄は、不機嫌な声で、そう言った。

「今日は、何かあったの?」

そう。

ユズル兄が、僕の部屋に来る時は、何か、嫌な事があったときだった。

「二階堂進って、知ってるか?ソイツが、うっとおしくてな。何かと、俺をライバル視するんだよ。」

「そうなんだ?でも、ライバル視されるって、ユズル兄が優秀だからでしょう?仕方ないよ。」

「後は、花園美夜子って女。ちょっと美人だからって、俺にしつこくつきまとってくるんだ。」

「ユズル兄。前にも、そんな事あったよね?まぁ、モテる男の宿命でしょう?」

僕が、そう言うと、ユズル兄は、

「明日は、お前が作った弁当が食べたいなぁ。」

とんでもないおねだりをしてきた。

そう。

実は、母さんより、僕のほうが料理上手なのだった。

だからといって、決して、母さんの料理が下手でも不味くもない。

普通に美味しいのだ。

「何で、僕が、ユズル兄のお弁当を作らなきゃいけないのさ?」

「『彼女が作ってくれたお弁当』って、そう言うんだよ。」

「何でさ?」

「しつこい女どもを牽制できるだろう?うん。我ながら、賢い考えだな。」

ユズル兄は、勝手にそう言うと、

「じゃあ、明日からよろしくな。」

僕の部屋から、出て行こうとする。

「ちょっと待ってよ。そんな簡単に決めないでよ。」

「いいじゃんか?お前の作る弁当は、実際、上手いんだしさ。」

そう言って、ユズル兄は、部屋から出て行ってしまった。

まったく……。

ユズル兄、勝手すぎるんだから。

そう言いつつも、僕は、情けないことに、明日のお弁当のおかずを考えていたのだった。







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