街が赤く染まる頃。ー雨 後 晴ー



車内は俺と心優だけになると急に静かになって、車の外に流れる景色を見ていた。

いつもとは違いすぎる景色を、ひたすら目に焼き付けていた。


「もうつくよ~」


海が見えなくなって数分、車はまた停まろうとしていたから、荷物を持って降りる準備。


「集合時間は確か18時半よね?
なら遅くても17時半には戻ってきてね。」


「わかりました。」


運ちゃんとそんな会話をし終える頃には車も停まった。


「んじゃ、いってきまーす!」


と、俺は勢いよく車から降りた。
そのあと心優も。

……降りたのは、いいんだけど


「曇ってるね~」


「……だな。」


ついさっきまで晴れてたのに、突然雲が広がっていて
……さっきより、海がきれいに見えなくなっていた。


「ま、いっか。
ここなんなの?」


「あっち行こ。
なんかここらへんの景色が一望できるんだと。
古宇利島で一番高いところ。」


「へぇ、そうなんだ。
じゃあ行こっか。」


曇ってるからか?夕方だから?
もうここには俺ら以外だれもいない。

ま、話があるならちょうどいいのかもだけど。



「智樹、告るんだとさ。あそこで。」


「へー、そうなんだ。
うまくいくといいなぁ。」


「そうだなー。
心優にはひどいフラれ方だったしな。
告ってもねーのに。」


「う、うるさいよ。
あの時は私も尖ってたの!」


「今はかなり丸くなったもんな。」


「まぁ、大翔と智樹と青木さん限定だけどね。」


「え、俺には尖ってんじゃん。」


「はぁ?大翔には一番優しくしてるじゃん!」


「えー、そうか?」


「そうだよ。」




そんな、くだらない話をしながら足を進める。
そんなくだらない話が楽しすぎて、途中で心優の言った"一番優しくしてる"なんて言葉に、笑みがこぼれまくってて

隠すのに超必死だった。



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