街が赤く染まる頃。ー雨 後 晴ー



「ってかさ、一人暮らしならなんで昨日、公園にいたわけ?」


「……家の人から逃げてただけ。
別に迎えなんか要らないから。

私のこと捨てたくせに、そうやって縛り付ける親が嫌い。
そのくせ、絶対に自分で来ない親が嫌い。

だから、あそこで時間潰し。暗くなるのを待ってた。」


「……そ。
親と和解する気、ねーんだ?」


「しようとしたわよ。
…でも、もう無理だと思う。
だって会うこともできないんだもの。
家にもいれてもらえない。

でも、おかげで結婚しなきゃとか、そういうのからは解放されたから。
ご令嬢なんてもうこりごり。
恋愛もしたくない。友達も要らない。

もう疲れた。
死にたい訳じゃないけど、でも
生きていくのが疲れた。」


「……そっか。
でもさ、仁科は悪くねーんじゃねーの?
話一通り聞いてて思ったんだけど。

友達の自殺とか流産とか…全部仁科が悪かったのかよ。
仁科はなにも知らなくて、ただ一人の男を真剣に好きになっただけじゃん。

少なくとも、聖凛の友達には話せばわかってもらえたんじゃねーの?
真実は喋らず転校してきたんだろ?」


昨日話した聖女の話し方だと、なんとなくそんな気がする。


「……語りすぎると真実は見えなくなるから。
多くは求めたりしない。

私自身がちゃんとわかってればいいの。
たとえ理不尽な結果だったとしても、それを受け止めて生きていかなきゃならない。

正しかったのかはわからない。
だけど私は愛梨のことが今でも大好きで、彼のこともとても大好きだった。
その気持ちに、嘘はないから。

だから別にいいの。
私自身がちゃんとわかっていて、私自身が私を受け入れていれば、それで。

ほかに望むものなんてなにもない。」


「そっか。
でも俺もちゃんとわかってるから大丈夫だよ。」


「……そういう軽いところ、本当に大嫌い。」


「そりゃどうも。」


……でも、嘘じゃねーよ。
お前のその話、俺もちゃんと受け止めたからよ。

忘れんなよ。
ちゃんと話せば、ちゃんと伝わるってこと。


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