街が赤く染まる頃。ー雨 後 晴ー
「さ、てと。
話も聞いたし夕飯の支度でもすっかなー。
お前も食ってくだろ?手伝えよ。」
俺はそういって一回立ち上がり、冷蔵庫からタネと餃子の皮を取り出した。
「は?何この量。」
「作れるときにたくさんつくって冷凍しとくんだよ!
そしたらバイトのあとでも焼くだけで済むだろ。
手、洗ってこいよ。」
「いやでも…私料理なんてしたことないけど。」
「は?……え、一人暮らしだろ?」
「家政婦がいる。」
………これだから金持ちは…
「だったら見て覚えろ!
お前な、餃子なんて普通ガキの頃手伝いで包んだりするくらい定番なんだからな!
よーく見とけ!」
つーことで、仁科の横にどっかりと座り、俺は餃子の皮を1つ取り出した。
「まずこのスプーンでこのくらいとる!
で、乗せて皮の縁に水を塗って、あとはこう波にするだけ!
簡単だろ。ほらよ、やってみろよ。」
「うん。」
なんて、やってみるけど
「はは、へったくそー」
「うるさい!じゃあやらせないで!」
めっちゃ下手くそだった。
「やらねーから下手なんだよ。
仁科は女なんだし、こういう機会にできるようになれよ。
いつまでも親のすね、かじってるわけにはいかねーんだからよ。」
なんて、偉そうなこといってるけど
俺も一人暮らしするまで、まったくできなかったんだけど。
でも、こうなるとわかるんだよな。
母親のありがたみ。
「わかったわよ。」
仁科は俺の言ったことが響いたのか?
それからは真剣に、餃子を包んでいた。
形は悪いけどでも、見た目で決まらねーから。