街が赤く染まる頃。ー雨 後 晴ー
「え…人殺し…?」
「なんて。
気にしないでください。」
「いやいやいや!気になりますから!」
……こいつは…
無神経にもほどがあるだろ…
こんな重い空気を放っているこいつから、よくもそれを聞き出そうとできるよな…
…でも、この無神経な男のおかげで
「俺、前の彼女を裏切ったんです。
しかも二人も、ですよ?
それで命を落とした人もいる。
俺ってつくづく恋愛しちゃいけないんだなって思いますよ。」
……ついに、確信を得た。
「…裏切った、って?」
「彼女がいるのに、別の人を好きになった。
ただそれだけのことですよ。」
そういう店員の表情にはもう、笑みなんて残っていなかった。
「…浮気して、誰かが命を?」
「そういうこと。
めんどくさくなるくらい、真面目に恋愛してたつもりなんですけどね。」
「まだ好きですか?その人のこと。」
「はは、そんなのはもう封印した。
じゃなきゃ、また面倒なくらい病まないといけなくなるし」
そういった顔は、もう完全に高校生の顔をしていた。
「償うこともできない傷みを抱えて生きていく現実は変えることができないから。」