君の本気に触れた時…
しかも、外では理央先輩なんて…そんな風に呼んだこともないのに。

先輩は、そんな彼には気づかずに話しかけている。


「中城君の家も…この辺りなの?」

「はい。すぐそこのアパートです…。」

「へぇ…朝倉と近いんだね。すごい偶然。」

「そうですね…僕も最近知ったんで。じゃあ、そろそろ失礼します…。」

「あぁ、そうだね、引き止めてしまってごめんね。」


そして中城君は私たちに会釈をすると、一瞬だけ私をその視界の端に入れて去って行った。


いつもと全然違う彼の態度に違和感しかなかった。


「家も近いなんて…すごい偶然…だね。まぁ偶然かもわからないけど…。」

「え…?」

「いや、別に何でもない。じゃあ、俺もそろそろ行くね。朝倉も風邪ひかないようにはやく家に入って。おやすみ。」

「はい…ありがとうございました。先輩も気をつけて帰ってくださいね。おやすみなさい。」


先輩の背中を見送り続ける私を、彼は途中で一度だけ振り返った。
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