君の本気に触れた時…
重なり合う手から、どちらのものか分からない鼓動をずっと感じていた。

私のアパートに着き、窓から私に視線を向けた先輩。

だけど、顔は先輩の方を見れなかった。


「せ、先輩…ありがとうございました。」


震えそうになる唇からどうにか声を出した。

手が離れる直前、先輩の指先から僅かに力が伝わってきた気がした。


「あの…タクシー代…」


そこまで言った私を先輩は手だけで制すると、運転手さんに声をかけて私に先に降りるように促しその後から一緒に降りてきた。

タクシーはまだ走り出す気配はない。

ドアだけが閉じられたまま私たちから少しだけ離れたところに停まっている。


「あの先輩…これタクシー代です。約束通り受け取ってください。」


そう言って先輩に手渡そうとしたけど、彼はそれを拒否した。
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