君の本気に触れた時…
タクシーに乗ってからも、胸のドキドキはおさまってはくれなかった。

先輩は、私の足取りが危なっかしくて仕方なく手を引いてくれただけだよね…

そう思った方が、しっくり来る気がした。

先輩が…私になんてそんな事あるはずがないし…

幸運が重なってるからって調子に乗ったら後で痛い思いを見るのは自分。

そうだそうだ…と頭の中で自分を納得させて気持ちを落ち着かせたのに…


なぜか、タクシーの後部座席に並んで座っている私の手はまだ先輩の手に繋がれたまま。

この手の意味は?そう思ってもそれを直接聞く勇気なんてない。

その時、繋がれた指先から先輩の力が伝わってきた。

思わずピクンと肩を震わせ…先輩の方にゆっくりと視線を向けると、先輩は窓の外を向いたまま顔を見せてはくれなかった。

どうしたらいいのかも分からなくて…ただお互いに黙ったまま流れていく時間と窓の外の景色。

しばらくしてタクシーがアパートの付近に静かに停まった。
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