俺を好きって言えよ
車の外をただひたすら目に写す。
建物、人、植物・・・・・。
私が今までいた大都会よりは劣るが、ここも立派な都市だ。
ここに来たのは担当医の先生に、「亜衣ちゃんの今現在の体の具合だと、ここの町が一番亜衣ちゃんにあっていると思うわ。どうかしら?ご両親に相談してこの町に住んでみたら」という話をされたから。
どうせ、うちの両親のことだから、心配だからといって、反対するだろうと思っていたが、幸か不幸かすんなり承諾してくれた。
訳を聞いてみると、どうやらその町には父の弟で私の叔父にあたる舞華 純太郎(じゅんたろう)が住んでいるからなんだそうで。
話はあれよあれよという間に進んでいって私はその叔父の家に下宿することになった。

そして、現在。
私は叔父の家に向かって車を走らせているのである(まあ、実際に車を運転しているのは御付きの人だが)。

それから、十分もしない内に車は目的の叔父の家まで着いた。
わぁ、立派なお座敷!
和を感じさせる良いつくりだな、なんて至極どうでも良いことを考えている間に御付きの人が家の呼び鈴を鳴らした。
すぐに中から、イカツイ男性がすっ飛んできた。
そんなに急がなくてもいいのにな。
「奥で組長が待ってます。さ、中へどうぞ」
お礼を言ってから、敷地内へ足を踏み入れた。
家の中はとても広く、温室育ちでこんなの日常茶飯事の筈の私まで圧倒された。
イカツイ男性の後ろを歩いて、辿り着いたのは中でも目を見張るほどの大きな扉。
扉の取っ手には細工が施されており、竜がその丸い取っ手に巻き付くようになっている。
「お、俺が案内できるのはここまでです」
そういうとそのイカツイ男性は一目散に逃げていった。
この扉の奥にはどうやら、怖い人がいるらしい。
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