夢物語【完】
「あたしは高成が来てくれただけで嬉しい。会えると思ってなかったし来てくれるとかサプライズやし!」
「オプション付きだけどな」
オプションて!と二人を気の毒に思うけど京平はもっとねちっこ~くグチグチ言うんやろう。
これも電話がかかってきたら要注意。
あ~もういい!
そう言いながら立ち上がり、あたしを抱きしめると同時にベッドに倒れ込んだ。
「ちょ、っと!!なに?!」
さっき同様、腕枕をされたまま抱きしめられたあたしは顔を上げることもできず高成の鎖骨辺りでモゴモゴと喋ることしかできん。
それでも離してくれせそうにない高成に諦めたあたしは大人しくすることにした。
あたしが大人しくなったのを確認すると少し力を抜いた。
額に頬を擦り付けてはキスを繰り返す。
・・・くすぐったいし、甘えてるみたいで可愛いし、かなり嬉しいけど恥ずかしい。
ドキドキは・・・ない。
ドキドキはないけど、安心感がある。
抱きしめられた温もりと安心感で、ゆっくりと睡魔に誘われる。
「眠い?」
「ん〜」
朧げで半分夢の中のあたしの返事を聞いた高成は足元にあった掛け布団を足でうまいこと持ち上げて肩までかけると枕を自分のいい位置に移動させる。
それから腕枕してる腕も痛くなったんか少しも目を開けようとせんあたしの頭を軽く持ち上げて自分のいい位置に移動させる。
うっすらと開けた視界にはあたしを微笑みながら見てる高成。
「寝ていいよ」
「高成は?」
「寝ない」
「なんで?」
「もったいない」
「・・・?」
腕枕をしてない方の手で顔にかかった髪をよける。
耳元で聞こえる高成の鼓動のおかげで半目状態のあたしの顔は相当ブサイクやろう。
それでも続きが気になる。
そんなあたしを抱きしめる。
「だって涼を抱きしめて寝ることなんてないじゃん。寝顔だって普段見れないし。今すごい幸せだもん」
だから寝てらんない、と笑う。
高成の言葉にハッとして、今の自分の行動に後悔し始めて目を開けようとしたら片手で目隠しされてそれを止められる。
「涼は寝てなきゃ」
「・・・嫌」
高成が言うように、こんな状況は遠恋中のあたし達にそうない。
じゃあこの空気を満喫せなあかんやんか!って思えば思うほど睡魔はあたしを覆い尽くす。
この瞼閉じたら完全に落ちる。
そう思った瞬間、落ちた・・・と思う。
遠くで、なんか夢でなんかはわからんけど、“メリークリスマス”って聞こえた気がした。