夢物語【完】
―――――
―――
「で、なんで帰ってきたん?」
スタジオの最寄り駅から陽夏ちゃんちの最寄り駅を2つ過ぎた駅で降りて、どこにも寄らず高成のマンションに来た。
いつものデートの時みたいに…手を繋いで。
付き合い始めて、それなりに行き来をして街を歩いて、写真もそこそこ撮って、恋人同士らしい思い出も増えてる。
でも手を繋いだり、キスしたり、…それ以上のことをするのはまだ恥ずかしい。
遠距離恋愛の醍醐味は“再会”やと思う。
会える時は何週間かに1回会えるけど、会えん時は何ヶ月も会えん。
だから会えた時に感動する。
“会いたかった”とか、見た目が変われば感じる“ドキドキ”とか。
一緒におる時間が少ない分、付き合い始めのドキドキ感が薄れることなく、むしろ更に増す、みたいな。
だから、いつもあたしはドキドキしっぱなし。
こうやってソファーで隣りに座ってる間でも。
ソファーのスプリングを利用して深く座り、あたしと肩の高さを合わせた…と思ったらコテン、と頭をあたしの肩に乗せた。
「“俺だけ”ってのは無いの?」
肩を置いたまま少し頭を後ろにさげて上目遣いで、あたしを見上げる。
その顔が、・・・カッコイイ。
「“俺だけ”のっての」
無言で見つめるあたしにとうとう頭を上げて、
「ないの?」
可愛く首を傾げる。
か、可愛いんやけど!
え!?可愛いんやけど!!
え、なに!?
新しい甘え方!?
ヤバイ、可愛い!!
いや、可愛カッコイイ(?)!!
「涼、聞いてる?」
「き、聞いてる!あ、ある!!」
なんで吃(ども)ったの?って笑われたけど、そりゃ吃る。
いつもより...って、いつもカッコイイけど、今日は可愛さに加えて、男前増加中。
こんな時に改めて感じる。
あたしの彼氏は、高成は……カッコイイって。
バクバクする心臓と熱くなる顔を必死で抑えながら、バッグの中に入ってる紙袋を取り出す。
袋と紙袋だけだけは準備して、持ってきてた。
シフォンケーキと一緒に作ったけど、これは特別。
陽夏ちゃんもあたしと一緒で京平用に特別に作ってた。
4人用にシフォンケーキ、高成用にはハート型の小さいチョコとブラウニー。
作ってる間は期待と不安でワクワクした。
今はさっきのバクバクと美味しいって言うてくれるか不安でドキドキする。
まさか高成から言われるとは思わんかった。
タイミングを計ってた、といえば確かに計ってたけど、別に今じゃなくてもいいかなって思ってたから正直焦った。
「はい」
ソファーに座ったままの高成の目の前に立って、紙袋を差し出す。
チラッとあたしを見てから紙袋を受け取った。
袋を開けて中を覗く。
またチラッとあたしを見て、紙袋から箱を取り出す。
その箱をゆっくり開いて、…閉じた。
「は!?」
閉じて、そのまま紙袋に直した。
紙袋を持ってない手で、箱を直した手で、あたしの腕を引いて隣に座らせた。
「まぁまぁ座って」
隣に座らされると、高成は再び箱を取り出して、今度は開けてチョコを取った。
食べてくれる、と思ったら目の前に差し出した。
―――
「で、なんで帰ってきたん?」
スタジオの最寄り駅から陽夏ちゃんちの最寄り駅を2つ過ぎた駅で降りて、どこにも寄らず高成のマンションに来た。
いつものデートの時みたいに…手を繋いで。
付き合い始めて、それなりに行き来をして街を歩いて、写真もそこそこ撮って、恋人同士らしい思い出も増えてる。
でも手を繋いだり、キスしたり、…それ以上のことをするのはまだ恥ずかしい。
遠距離恋愛の醍醐味は“再会”やと思う。
会える時は何週間かに1回会えるけど、会えん時は何ヶ月も会えん。
だから会えた時に感動する。
“会いたかった”とか、見た目が変われば感じる“ドキドキ”とか。
一緒におる時間が少ない分、付き合い始めのドキドキ感が薄れることなく、むしろ更に増す、みたいな。
だから、いつもあたしはドキドキしっぱなし。
こうやってソファーで隣りに座ってる間でも。
ソファーのスプリングを利用して深く座り、あたしと肩の高さを合わせた…と思ったらコテン、と頭をあたしの肩に乗せた。
「“俺だけ”ってのは無いの?」
肩を置いたまま少し頭を後ろにさげて上目遣いで、あたしを見上げる。
その顔が、・・・カッコイイ。
「“俺だけ”のっての」
無言で見つめるあたしにとうとう頭を上げて、
「ないの?」
可愛く首を傾げる。
か、可愛いんやけど!
え!?可愛いんやけど!!
え、なに!?
新しい甘え方!?
ヤバイ、可愛い!!
いや、可愛カッコイイ(?)!!
「涼、聞いてる?」
「き、聞いてる!あ、ある!!」
なんで吃(ども)ったの?って笑われたけど、そりゃ吃る。
いつもより...って、いつもカッコイイけど、今日は可愛さに加えて、男前増加中。
こんな時に改めて感じる。
あたしの彼氏は、高成は……カッコイイって。
バクバクする心臓と熱くなる顔を必死で抑えながら、バッグの中に入ってる紙袋を取り出す。
袋と紙袋だけだけは準備して、持ってきてた。
シフォンケーキと一緒に作ったけど、これは特別。
陽夏ちゃんもあたしと一緒で京平用に特別に作ってた。
4人用にシフォンケーキ、高成用にはハート型の小さいチョコとブラウニー。
作ってる間は期待と不安でワクワクした。
今はさっきのバクバクと美味しいって言うてくれるか不安でドキドキする。
まさか高成から言われるとは思わんかった。
タイミングを計ってた、といえば確かに計ってたけど、別に今じゃなくてもいいかなって思ってたから正直焦った。
「はい」
ソファーに座ったままの高成の目の前に立って、紙袋を差し出す。
チラッとあたしを見てから紙袋を受け取った。
袋を開けて中を覗く。
またチラッとあたしを見て、紙袋から箱を取り出す。
その箱をゆっくり開いて、…閉じた。
「は!?」
閉じて、そのまま紙袋に直した。
紙袋を持ってない手で、箱を直した手で、あたしの腕を引いて隣に座らせた。
「まぁまぁ座って」
隣に座らされると、高成は再び箱を取り出して、今度は開けてチョコを取った。
食べてくれる、と思ったら目の前に差し出した。