クールな同期と熱愛はじめ

「悠里ってば、すごーい。桜木くんを簡単に落としちゃったね」

「違うよ! そうじゃないって!」


スイートルームが胡桃の妄想を暴走させてしまった。
一緒に寝泊まりしたことで、すっかりそういう関係になったと思い込んでしまったようだ。しかも、普通の声のトーンだから勘弁してもらいたい。

誰も聞いていなかったかと、思わず周りを見回してしまった。
幸いにも賑やかなおかげで、誰の耳にも届かなかったようでホッとする。


「だって、ひとつのベッドで寝たんでしょう?」

「……うん」

「健全な男女だったら、なにもないまま朝を迎えるはずがないじゃない」


ところがどっこい、なーんにもなかったのだ。清々しいほど綺麗さっぱり。
彼にとってみれば、私は女性に分類されていないことの証明なのかもしれない。

どうしてだろう。
今、胸が微かに痛んだ。
鋭い針先でチクンと刺されたような感じだ。


「本当はあったんでしょう?」

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