クールな同期と熱愛はじめ
「……おかしいな。ルームサービスの片づけは明日でいいって言っておいたのに」
そう言いながら、高梨さんがソファから下りた気配がした。
そっと目を開けると、彼はドアの方へ歩いて向かうところだった。
急いで起き上がり、なんとかバッグだけ掴む。震える足でよろけながら高梨さんのあとを追い、扉を開けた隙を狙って通路へと飛び出た。
「――宇佐美!?」
ホテルのスタッフに助けを求めようと出てきたのに、そこにいた桜木くんの姿に目を見開いた。
どうして彼がここにいるのか考えている余裕はない。咄嗟に彼にすがり付いた。
「どうしたんだよ。なにがあったんだ」
聞かれても答えられない。
恐怖のせいか、言葉が喉の奥に張り付いたままだ。桜木くんの腕をぎゅっと掴んで訴えることしかできない。
不意に彼の目に力が込められる。
桜木くんは私の手をトントンとあやすように叩くと、私を背中にかばった。