クールな同期と熱愛はじめ
そもそも、ここになにがあるのか私たちはわかっていない。
立てかけてあったメニュー表でドリンクのページを開いた。
ところがそれを見て、胡桃とふたり揃って目が点になる。“なんなりとどうぞ”と書かれてあったのだ。
具体的な飲み物がなにひとつとして書かれていない。
試しにめくった別のページも同様に、『おつまみ』や『サラダ』、『麺類』とかいう大雑把な言葉ばかり。飲み物だけでなく、料理の名前もどこにも書いていないのだ。
「あ、ごめんね。うちの店、メニュー表はあってないようなものなんだ。言ってもらえれば、だいたいのものは作るよ。とはいっても、食材がないものは無理だけどねー」
胡桃と私は顔を見合わせてしまった。
そんな食べ物屋は、未だかつて知らない。
どうしようかと、胡桃とヒソヒソ始める。
私たちは、一風変わった店へ来てしまったようだ。
しかし入ってしまった以上、なにも飲まず食わずで店を出るわけにもいかない。顔見知りならなおさらだ。
とりあえず、オレンジフィズをふたつ注文すると、間宮さんは「かしこまりました!」と満面の笑みで答えた。
彼が早速シェーカーを振りだす。パグっぽいせいか、真剣なのにどこか抜けたような表情だ。