クールな同期と熱愛はじめ
ふと見渡した設計部内に、桜木くんの姿が見えないことに気づいた。
「桜木くん、来てますか?」
斜め向かいの席の越川さんに尋ねると、「休みだよ」という返答だった。
「休み?」
「具合が悪いって、さっき電話があったらしい。昨日もかなり辛そうだったからな」
越川さんはパソコン画面を注視したまま言った。
もしかして、私の風邪が移ったのかもしれない。いや、もしかしなくてもだ。そうに違いない。
マスクもせずに咳き込んだときのことを思い出した。悪いことをしてしまったと思った次には、『うわっ、どんな非難を浴びせられるだろう』と不安になる。
これは、大変なことをしでかしてしまったぞ。そう思ったところで、一度移動してしまった風邪菌を連れ戻すことはできない。
とりあえず今は、締めきり間近のプラン設計に取り掛かろう。気持ちを切り替え、パソコンを立ち上げた。