凄腕救急医は離婚予定の契約妻を湧き立つ情熱愛で離さない
8.蜜月
8.ミツゲツ
 スマホのアラームが鳴るよりも早く目を覚ました美鶴は透の姿を探した。
「昨日も帰ってこられなかったんだ……」
 時任建設との業務提携が済み現在最高潮に忙しい透は病院へも顔を出さなくなった。当然家にも帰宅しない日々が続いている。
リビングの窓を開け換気をするとコーヒーを入れながら何気なくテレビをつけた。暦の上では秋を過ぎているというのにまだ真夏日が続いている。お天気お姉さんが笑顔でそう告げていた。
コマーシャルを挟み、トップニュースをアナウンサーが伝えた。
「海外の企業が大手建設会社松田組の株式を五十パーセント取得したと発表したということです」
「四季リゾートとの業務提携も解除されたという話を聞きますし……松田組に何があったんでしょうか」
女性キャスターが続ける。こうなることは八重子から聞かされていた。松田組の周囲で不穏な動きがあるのだと、近々大きなニュースになると。
真っ先に思い浮かぶのは顔も知らない松田組の令嬢のことだ。自分の幸せが彼女の不幸につながっているのだと考えてしまう。美鶴はリモコンを手に取ると電源を落とした。
着替えて食事を済ませると病院へ向かう。仕事をしていると余計なことを考えずに済むのだ。仕事にも慣れ、嫌がらせされることもなくなった。時々町田と飲みに行くこともあるし、透のいない生活も楽しめるようになってきた。とはいえ、たまには顔を見たいと思うもの。夕ご飯を一緒に食べられたらうれしい。昼休みに透へメッセージを送った。
「返事は期待しないでおこう」
 自分に言い聞かすようにしてスマホをロッカーへしまった。
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