凄腕救急医は離婚予定の契約妻を湧き立つ情熱愛で離さない
 リビングのドアを開けるとキッチンカウンターの向こう側にエプロン姿の透を見つけた。
「お帰り、美鶴」
「透さん!」
 美鶴はキッチンへ駆けていき野菜を洗っている透の背中に抱き付く。
「メッセージ見たよ。なかなか帰れなくてごめん。業務がひと段落着いたんだ。それで帰りにステーキ肉ってきた。ワインも開けよう」
 松田組に代わり、時任建設と事業提携をしたことで事業計画が以前よりも順調に進んでいるという。さらに透の弟が無事に海外の大学を卒業し四季リゾートへ就職したことも相まって両親の関心はいまや弟にあるようだ。透は悲しむどころか喜んでいた。自由になれるのも時間の問題だといって。
「うれしい報告を聞けてよかった。病院にも来られるようになるの?」
「ああ、もちろん。家にも帰れるようになるよ」
「……もう。大好き」
「はいはい。ほら、早く風呂入っておいで」
「うん。でも……」
 回した手に力を込めた。一瞬でも離れたくない。
「じゃあ、一緒に入る? 夕飯遅くなるけどいい?」
「おなかすいたけど、一緒に入りたい」
 言いながら透の背中に顔を押し付けた。フフッと透は笑う。
「いったいいつからこんなに甘えん坊になったんだ?」
 困った妻だといいながら透は美鶴の腕をほどく。向かい合うと美鶴はキスをせがんだ。顎を引き上げられてじらすようにキスをされ、「もっと」とねだると透の息が荒くなっていく。煽ったつもりはなかった。下着を下ろされ抱き上げられてカウンターに座らされる。大理石の天板の冷たさに我に返った。
「……待って」
「やめたい?」
「……ううん、して。お願い」
冷静な思考などすぐに塗り替えられてしまうほど美鶴は透を欲していた。濃厚な愛撫が始まる。キッチンで愛される背徳感からかいつもより感度高まっているように思えた。美鶴は耐えきれず嬌声をあげ透にしがみついた。
「透さん、好き。大好き」
 熱に浮かされたように美鶴はそう何度も言い続けた。
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