クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~



「そだ! 加納さん今度こそ合コン来ない? ヒルズ族だよ、ヒルズ族!」

「え?」


友達に連絡を取る途中の先輩が、急に身を乗り出して私に迫ってきた。


「だから、合コン! 六本木のレストランであるんだよ。ヒルズ族と。ぜんぶ向こうの奢りだから、ご飯がタダくらいの気持ちで来ればいいし。あ、でもちゃんとしたカッコしないといかんから、今日の夜買いに行こ! アタシの知り合いなら遅くまで店を開けてくれるから」


クリスマス前のラストチャンスだよ! ここで頑張らないとシングルベルだよ。と立て板に水で喋りまくる先輩の勢いにタジダジになる。


「加納さんだったら、ちゃんとすればもっと可愛くなるし。控え目なのに家庭的だから、絶対、いい人見つかると思う。ヒルズ族ならあわよくば玉の輿で、社長夫人だよ! どう?」


富永先輩の言葉は正直嬉しい。褒められて照れくさいし、お誘いもありがたい。


でも……。


「すみません……私は……今は大切な人がいますから」


一番そばにいたい人を思い浮かべながら、断りの言葉を口に出した。曖昧な言い方になってしまうのは、その人とはハッキリした関係になれないだろうから。

(今は彼との時間が何よりも大切……一秒でも長くそばにいられたら)


ところが、私の言葉を聞いた富永先輩が悲鳴のような叫び声を上げる。


「ええええっ! 加納さんいつの間にカレシが!? アタシを出し抜いて~。しょ、紹介してよ。カレシの兄弟とか友達とかァ」


涙目の彼女に加藤さんが苦笑いしながら「ご愁傷様」と言えば、ポコンと殴られて頭を抱えてた。


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