クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
やっぱりオフラインだけでは足りない資料も多くて、まだ電子化されてない過去の資料を探しに初めて資料室にも足を運んだ。
「よいしょ……っと」
目ぼしい資料のファイルを十何冊か抱えて歩いていると、さすがに目の前がよく見えない。エレベーターに乗ろうとしてボタンに手を伸ばしたけれど、届かなくて一生懸命指を伸ばす。
あとちょっとのところで急に重心が前に移り、よろめいた私は必死に資料をキープしようとしたけど。その努力も虚しく、抱えた資料ごと前に倒れた――はずだった。
だけど。
バサバサッと派手な音が聞こえて、ファイルが床に散らばっている中で。てっきり前に倒れたかと覚悟していたのに――気がつけばお腹にがっちりと腕が回され、倒れずに済んだと気付いたと同時に。自分が誰と密着しているか気づいて、パアッと頬に熱が散った。
「……気をつけろ」
いつもより低い、囁く様な声。思わずそれにコクコクと首を縦に振れば。彼は納得したのか私から腕を引いた。
「あ、ありがとうございます……葛城課長」
絞り出す様な声で何とかお礼を言うと、自分からパッと離れてすぐに距離を取る。
(やだ……顔が熱い。絶対、赤くなってる)
自分の頬に指をそっと添えれば、火照ってるということがわかるほど。フワリと香ったミントの香りに、ドキンドキンと鼓動が速くなる。
社内でのいきなりのニアミスに、落ち着けと自分を叱りつけながらも、赤い顔を隠すようにしゃがんで資料を拾い集めた。