クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
「はい」
大概拾い集めた時、目の前に青いファイルが差し出された。
「ありがとうございます……あ」
お礼を言うために顔を上げれば、目の前に居たのは見慣れないスーツ姿の男性。加藤さんに似た雰囲気だけど、彼の方が背が高くて顔が整ってる。
どこかで見たことがある気がするから、もしかして営業の人だろうか? と首をひねっていると。男性は苦笑いを浮かべた。
「もしかして、忘れちゃった? 歓迎会で話した営業一課の伊藤だけど。ほら、君オレンジジュースばっか飲んでたから酒勧めたでしょ」
「あ……!」
1ヶ月前の歓迎会でのエピソードを聞けば、そういえばと思い出す。学校について訊かれて気まずくなったんだった。
「す、すみません! あの時は盛り下げてしまって……」
謝るために頭を下げようとしたら、「いや、謝らなくてもいいよ。オレも悪かったし」と制止されてしまった。なら、なぜ話しかけて来たんだろう?
「あのさ……あの後気になってたんだよね。加納さん傷つけちゃったかな……って。けど、なかなか話しかける機会が無くて」
伊藤さんはなぜか手のひらを何度も握ったりしてる。そわそわ落ちつきなく見えるのは、急いでるから?
「あの……ならお互いに悪かったということで。お急ぎでしたら、もうお行きになった方が」
「ち、違うよ!」
伊藤さんはいきなり叫ぶと、口元に手を当てて咳払いをした。
「そうじゃなくて……あの、さ」
今度は私をまっすぐに見据えて、予想外のことを口にした。
「もしよかったら……お詫びに食事でもどうかな?」