クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
お詫び?
あ、もしかしてすごく気にして謝るために気を遣ってくださったのかな?やっぱり悪い人じゃなさそう。
「あの、謝罪でしたらもういいです。私は気にしてませんので……」
「え、ち。違うよ! 謝る気持ちというよりも……その、加納さんと一緒に食事をしたいんだ」
「え……と」
私と一緒にご飯に行きたい? 意味がよくわからなくて、鈍い頭で一生懸命考えてみた。
あ、もしかしてみんなでご飯に行く予定だから誘って下さったのかな? こんな新人でも忘れずに気遣ってくれるなんて。やっぱりいい人だと思うけど。
給料日まであと2週間近くある。正直な話、金銭的なことはすべて葛城さんに負担して頂いてる現状、せっかく誘ってくれてもお金を出せない。そこまで負担していただくのは心苦しい。
「ごめんなさい……お誘いはありがたいんですけど……私、あの……お給料日前で……手持ちがないので」
お金が無いという言葉を出すのは恥ずかしいけど、仕方ない。変な見栄を張って身の丈に合わないことはしたくないし。
私がそう断ると、伊藤さんは「いやその」と頬を人差し指で掻き出した。
「お金は、良いよ。オレが奢るし」
「え、でも」
奢っていただくのは申し訳ないから、更にお断りしようと言葉を捜していると。後ろから声がかけられた。
「伊藤、外回りに行く時間は良いのか?」
「え、あ……葛城課長!」
伊藤さんのすっとんきょうな声に引かれて後ろを見れば、葛城課長がファイルを手に眉間にシワを寄せてこちらを見下ろしてた。